当協議会は、表1に示しましたように、平成23年2月19日に埼玉県民のVPD(予防接種で防げる病気)を撲滅することを目的に設立されました。会員は小児科医だけでなく、予防接種に関与する内科、産婦人科、耳鼻咽喉科、保健所の各医師や、看護職、薬剤師、その他のメディカルスタッフなど、さまざまな職種の方々により構成されています(表2)。比率としては、医師とそれ以外の職種がほぼ1対1といったところです。この体制をもって、埼玉県での予防接種の状況や感染症の発生状況を把握し、VPD制圧のための具体策を提案したり、多くの貴重な情報を提供し共有しています。
また、会全体の運営組織は会長、副会長、役員、会計、監事、オブザーバーで構成され、活動の企画立案、準備および実施は14名のコア役員が担っています。活動の原資は、会員から徴収する会費です。また、後述する講演会では会員/非会員といった資格に応じた参加費を徴収し、講師への謝礼や会場費などの運営費用に充てています。
表1
表2
主な活動には、当協議会が主催あるいは職能団体との共催で開催する講演会およびワークショップの企画・運営が挙げられます(図1)。可能な限り多くの方に本会の活動の内容を知っていただき、興味のある方にはご参加をいただいています。対象には関連企業も含まれますが、これは資金的な援助が目的ではなく、「一緒に勉強する機会を持ちましょう」というわれわれの意図を反映したものです。
講演会は半日間のプログラムに2~3演題を組み込み3~4ヵ月間隔で開催しています。2020年からは対面とweb参加のハイブリッド方式に変更し、参加費は会員/非会員に関係なく一律2,000円にしました。高名な先生にも年に1~2回、講師としてご講演いただいています。われわれ会員自ら講師を務めることもありますが、その際はすべてボランティアで、謝礼は一切受け取りません。
年に1回の「ワクチンフォーラム」の際にはワークショップを開催しています。ワークショップでは参加者がその場で情報を共有したり、ディスカッションができる場を設けています。医師では小児科医の参加が最も多いですが、医師以外の職種の参加者も少なくありません。看護師、助産師、保健師、薬剤師、ワクチン接種は受付から始まるということで医療事務職、そして保育士も参加しています。
図1
当協議会の活動には、関連する職能団体との連携が必須です。協議会のホームページ(http://www.saitama-vpc.com/whatis/what.html)は、講演会やワークショップなどの活動内容や案内を告知するための要となっています。告知対象の内訳は、埼玉県医師会、埼玉県小児科医会、小児科学会埼玉地方会、埼玉県産婦人科医会、埼玉県助産師会、郡市医師会などであり、経営主体、診療科、職種は多岐に亘っています。その他、予防接種に関するトピックスとして、埼玉県立小児医療センター内の予防接種センターから情報提供していただき、「埼玉県予防接種センターだより」としてホームページ上に掲載させていただいています。また、コアメンバー役員会の議事録もホームページ上で閲覧できます。
予防接種関連企業との連携は、慎重な配慮のもとに行っています(表3)。企業側も、医療用医薬品製造販売公正取引協議会の規定に従う必要があります。個々の企業で当協議会との共催あるいは後援についての是非を判断していただき、同規定に抵触しないことを確認していただいた上で可能であれば協力をいただいています。
なお、賛助会員については、利益相反の観点から「ワクチン関連企業以外」という基準を設けています。具体的には、注射針等を製造する医療機器メーカー、医療・医学を専門とするメディア、予約やオンライン診療システム関連企業などになります。
また、講演会については基本的に当協議会の主催で執り行っており、協力していただく企業に対しては事前に趣旨、日程、内容の説明を行った上で参加していただきます。趣旨に賛同いただければ共催あるいは後援が可能ですが、その場合でも、必ず複数社で対応していただいています。しかしながら、ここ数年の実績を見ると、会場設営や資料配付といった労務提供を除き、予防接種関連企業の協力は受けておりません。
表3
図2に、以上に述べました当協議会の特長をまとめます。発足前、私は日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会委員、日本小児科医会公衆衛生委員会の担当理事という立場にあったので、最新の情報に接することが可能でした。私のもとに集まってくる情報を親しい医師たちに提供したところ、異口同音に広く周知させる必要性を説かれ、それが当協議会立ち上げの動機になりました。情報を共有する活動を埼玉県から始め、それが他の地域にも広がれば、国全体の変化に繋がるかもしれないという考えに賛同してくれた医師、看護師、助産師などが一緒になって始めたのが当協議会です。それ以来、彩の国・予防接種推進協議会に何ができるのかと問い続けて10年が経ちました。現状において当協議会ができることは限られており、埼玉県という限られた地域での予防接種推進の試みも小さなものかもしれません。しかしながら、その集積は、やがて日本全体としての予防接種の推進に繋がるものと信じています。
最近は、若い医師から「興味があるので勉強したい、是非、参加させてほしい」という要望が増えています。こういった若い勤務医や小児病院の感染症専門医にも参画してもらうことでメンバーが若返り、活性化していると感じています。このことも、表4に掲げた「彩の国・予防接種推進協議会」という地域で活動する組織の役割に関する希望的観測を、より早い時期に実現する上での原動力になると考えています。ただし、当協議会の方法に固執する必要はありません。地域の事情にあった方法を採ることが重要であり、われわれのノウハウが少しでも参考になれば幸いです。
図2
表4
(国立がん研究センター中央病院 感染症部 感染制御室 感染症部長 感染制御室長)
(医療社団法人自然堂 峯小児科)