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RSウイルス感染症診療の現状と課題 新規抗体製剤ベイフォータス<sup>®</sup>の役割とは

サノフィ株式会社とアストラゼネカ株式会社は、日本国内においてベイフォータス®の共同プロモーションを行っています。

更新日:2024年6月14日

開催日:
2024年2月3日(土)
開催場所:
リーガロイヤルホテル(大阪)

2024年3月、長期間作用型の抗RSウイルス(RSV)抗体製剤であるベイフォータス®(一般名:ニルセビマブ)が製造販売承認された。RSVは、軽度の上気道感染だけでなく、肺炎や細気管支炎を含む深刻な下気道感染をもたらす。特に早産児や基礎疾患を有する児では感染リスクや重症化リスクが高く、入院を要するケースも少なくない。しかしながら現在、RSV感染症に対する有効な治療薬はなく、いかに感染を予防し、重症化を抑制するかが大きな課題となっている。

今回、「小児RSウイルス呼吸器感染症 診療ガイドライン2021」の監修者でもある日本大学医学部の森岡一朗先生を司会にお迎えし、浜松医科大学の宮入烈先生、大阪母子医療センターの野崎昌俊先生とともに、現在のRSV感染症診療の課題や新たに登場したベイフォータス®の役割について、最新の知見を交えて議論いただいた。

RSV感染症予防の現状と課題
RSV感染症流行の予測と課題

森岡:

新型コロナウイルス感染症の流行以降、RSV感染症の流行期が大きく変化しています。現在、RSV感染症の予防としては抗体製剤が中心的役割を果たしていますが、その投与時期の決定にはRSV感染症の流行予測が不可欠です。皆様の地域では、どのように流行を予測していますか。

野崎:

大阪には、府全体でパリビズマブの投与時期を協議するシステムがないため、施設ごとに開始および終了時期を決めています。当センターでは前年までの流行状況を参考に、他施設と情報を共有しながら、開始時期を決めています。しかし、近年は流行予測が難しく、流行に合わせた適切な投与ができない年もありました。

森岡:

東京都は昨シーズンまでは、流行の立ち上がりを見てから開始時期を発表していましたが、これでは感染拡大に間に合わない懸念があったため、2024シーズンからは見切り発車に近い形に切り替え、散発的な小流行を確認した時点でアナウンスを出しました。

宮入:

静岡県は、2021年度から小児科学会、小児科医会、周産期新生児研究会が協議し、パリビズマブの投与時期を統一するようになりました。協議を始めるのは2月頃で、同じく前年シーズンの流行状況を参考にしています。ただ、静岡県は東西に長く、流行のピークも東と西とでは異なるという特徴があります。

森岡:

流行初期をどう見出すかは、各地域に共通した課題のようですね。

投与回数について

森岡:

月1回のパリビズマブを投与継続する上で、想定の回数を投与できなかったというご経験はありますか?

宮入:

当院の新生児科でパリビズマブの投与漏れを調査したところ、投与対象の早産児の約1割が何らかの理由で投与を完遂していませんでした。希望がなく実施しなかった例や、元気だからという親御さんの判断で途中離脱した例などがありました。

森岡:

月1回の来院が難しいケースは時々ありますね。

予防対象範囲の妥当性

森岡:

他にRSV感染症の診療において課題と感じていることはありますか。

野崎:

当センターは三次医療施設として、基礎疾患のあるかかりつけの児や他施設からの重症例を主に受け入れています。ここ数年の入院患者の患者背景を調べてみると、およそ7割が基礎疾患を有する患者さんでした。そのうち心疾患が最も多く3~4割、次いで染色体異常や遺伝子異常、神経筋疾患、早産児は1割程度となっています。また、2歳超の患者さんが約半数を占めており、その多くは基礎疾患を有していました。2歳超というのは一般的にいわれているハイリスクの年齢よりも高いですが、基礎疾患がある児ではしっかり予防する必要があると思います。

森岡:

当院でも2歳超の入院は多い印象です。

野崎:

逆に、基礎疾患がなくても重症化する児は、毎年3割程度います。今後、予防の対象範囲を広げる議論も必要ではないかと思っています。

宮入:

海外では健常児を抗体製剤の適応としている国もあります。健常児まで対象が広がれば、疾病負荷の軽減につながるのではないかと思います。

ベイフォータス®の特徴
有効性ベイフォータス®の有効性

森岡:

さて、この度半減期を延長するように改良された抗体製剤ベイフォータス®が製造販売承認されました。その有効性を検証した臨床試験の一つがMELODY試験です1,2)。この試験では在胎35週以上(日本では36週以上)の健康な新生児及び乳児を対象に、投与5カ月後までのRSV感染症による下気道感染の発現率が評価されました。その結果、ベイフォータス®群はプラセボ群に比べ有意に発現率を抑制することが示されました(主要コホート:検証的な解析によるp値<0.0001、併合コホート:名目上のp値<0.0001、各々ロバスト分散を用いたポアソン回帰モデル、図11,2,3)。なお、併合コホートにおける有害事象発現割合は、ベイフォータス®群で86.2%(1,722/1,997例)、対照群で84.6%(843/997例)でした(表11,2)

野崎:

パリビズマブもそうですが、抗体製剤の有効性はとても高いと感じています。当センターの調査をみても、RSV感染症による入院患者のうちパリビズマブの適応患者は1~2割程度で、パリビズマブの平均投与回数は2回以下でした。つまりパリビズマブが適切に投与されていれば、概ね入院は防げていたことになります。ベイフォータス®は、単回投与で少なくとも5カ月間の効果が示されているので、重症化予防への期待は大きいです。

森岡:

効果の持続という点では、ベイフォータス®の血清中の抗RSウイルス中和活性を経時的に計測したデータがあります。これによると、生後初回シーズンにベイフォータス®を投与した際、投与後30日における抗RSウイルス中和活性はベースラインから4倍以上の上昇を示し、投与後360日でもベースラインより高値を維持することがわかります4)。つまり長期間の効果が期待できるのが、ベイフォータス®の特徴かと思います。

野崎:

流行時期に関わらず、長期に患者さんをRSV感染症から守れると良いと思います。

図1投与後150日までの受診を要したRSウイルスによる下気道感染の発現

・試験デザイン:国際共同、第Ⅲ相、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与試験

・有効性:主要コホートを対象にした主要解析において、ベイフォータス®群では対照群に対する相対リスク減少は74.5%であった(95%CI:49.6, 87.1、p<0.0001※1、ロバスト分散を用いたポアソン回帰モデル)。

・安全性:併合コホートにおける有害事象発現割合は、ベイフォータス®群で86.2%(1,722/1,997例)、対照群で84.6%(843/997例)であった。

※1 ベイフォータス®群の対照群に対する相対リスク減少は、欠損データ補完後に得られたロバスト分散モデル(層別化因子[ランダム化時の月齢]を共変量として含む)を用いたポアソン回帰に基づいて95%CI及びp値を推定した。

※2 ベイフォータス®群の対照群に対する相対リスク減少は、欠損データ補完後に得られたロバスト分散モデル(層別化因子[ランダム化時の半球、月齢、コホート]を共変量として含む)を用いたポアソン回帰に基づいて95%CI及びp値を推定した。

社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(D5290C00004試験)(承認時評価資料)
Hammitt LL, et al. N Engl J Med. 2022; 386(9): 837-846.
Muller WJ, et al. N Engl J Med. 2023; 388(16): 1533-1534.
表1MELODY試験における有害事象発現率(全体集団)
社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(D5290C00004試験)(承認時評価資料)
Hammitt LL, et al. N Engl J Med. 2022; 386(9): 837-846.
安全性ベイフォータス®の安全性

森岡:

安全性を主要評価項目にして行われたのがMEDLEY試験です4)。この試験は早産児と、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を有する患児を対象に、ベイフォータス®とパリビズマブを比較しています。ベイフォータス®群の全有害事象の発現割合は72.3%、パリビズマブ群は70.7%でした。いずれかの群で10%超を認めた有害事象は、上気道感染、発熱、鼻炎、上咽頭炎でした。また、グレード3以上に限るとベイフォータス®群の発現割合は8.1%、パリビズマブ群は8.2%でした。
RSV抗体製剤の安全性については、どのような印象をお持ちですか。

野崎:

当センターのパリビズマブ投与対象者はとても多く、月300名ぐらいに投与していますが、パリビズマブの安全性プロファイルは既知の範囲内でした。

使いやすさ単回投与、プレフィルドシリンジ

森岡:

単回投与という特徴についてはいかがでしょうか。

宮入:

単回投与は、先ほどの投与漏れや重複投与などのアドヒアランスの問題を解消してくれるものとして、非常に期待しています。

野崎:

当院には多くの投与対象者がいるので、予約管理の面でも回数が減るのは助かります。

森岡:

また、ベイフォータス®はプレフィルドシリンジです。細やかな投与量の計算が不要なので、簡便に投与できるように設計されています。臨床現場にとってありがたい特徴かと思います。

ベイフォータス®への期待

森岡:

最後に一言お願いします。

野崎:

RSV感染症から守るべき患者さんをしっかり守っていくことが我々の使命だと思います。今後も抗体製剤の役割は大きく、長期間作用型のベイフォータス®はより多くの小児の重症化抑制に貢献するのではないかと思います。

宮入:

ベイフォータス®の単回投与という特徴によって、これまで課題であった投与漏れが解消されればと思います。ベイフォータス®が、患者さんやご家族の負担軽減につながることを期待しています。

森岡:

ベイフォータス®は今シーズンに生まれたハイリスク児にも投与できますので、本日お伝えしたベイフォータス®の有効性、安全性、使いやすさの3つの特徴(図21,4,5)をしっかり捉えて、ぜひ今後のRSV感染症診療に活かしていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

図2ベイフォータス®のまとめ
*1)社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(D5290C00004試験)(承認時評価資料)
*2)社内資料:第Ⅱ/Ⅲ相国際共同試験(D5290C00005試験)(承認時評価資料)
*3)Domachowske J, et al. N Engl J Med. 2022; 386(9): 892-894.

【参考文献】
1) 社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(D5290C00004試験)(承認時評価資料)
2) Hammitt LL, et al. N Engl J Med. 2022; 386(9): 837-846.
3) Muller WJ, et al. N Engl J Med. 2023; 388(16): 1533-1534.
4) 社内資料:国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(D5290C00005試験)(承認時評価資料)
5) Domachowske J, et al. N Engl J Med. 2022; 386(9): 892-894.
本試験はアストラゼネカ株式会社及びサノフィ株式会社からの資金提供等による支援を受けた。

MAT-JP-2400530-1.0-05/2024