NICU感染症診療 メディカルスタッフ Webセミナー 初級ベーシック教育講座
「米国感染症学会週間(IDweek 2023)」より
Oral 1934
Nirsevimab*は標準治療のパリビズマブと比べ、より高く持続的なRSV中和抗体反応を示す:ハイリスク乳幼児を対象とした2:1の無作為化第Ⅱ/Ⅲ相試験(MEDLEY試験)の探索的解析より
Nirsevimab is associated with higher and more sustained RSV neutralizing antibody responses compared with standard of care palivizumab: observations from a 2:1 randomized, phase 2/3 trial in medically vulnerable children (MEDLEY)
Deidre Wilkins
(AstraZeneca社)

 長時間作用型モノクローナル抗体のNirsevimabは、在胎期間35週以下の早産児、および先天性心疾患(congenital heart disease:CHD)または慢性肺疾患(chronic lung disease:CLD)を有する乳幼児に対して、標準治療のパリビズマブと比べ、投与から151日目のRSVに対する中和抗体価が約10倍にのぼることが、第II/III相MEDLEY試験の探索的解析から明らかになった。

 Nirsevimabは、RSV流行期に出生または生後初めてRSV流行期を迎える新生児と乳児、および生後2回目のRSV流行期を迎えRSV感染の重症化リスクが高い24カ月齢までの乳幼児を対象に、RSV下気道疾患(lower respiratory tract disease: LRTD)の予防薬として米国FDAの承認を取得している。

 本試験は、在胎期間35週以下の早産児612例(早産児コホート)と、CHDまたはCLDを有する乳幼児306例(CHD/CLDコホート)を対象に、それぞれ2:1の割合でNirsevimab群とパリビズマブ群に無作為化された。1年目の流行期においては、Nirsevimab群はNirsevimabを単回筋注(体重5kg未満は50mg、5kg以上は100mg)した後、プラセボを月1回の頻度で4回投与し、パリビズマブ群ではパリビズマブを月1回(15mg/kg)、計5回筋注した。CHD/CLDコホートには、2年目の流行期にパリビズマブ群を1:1の割合でNirsevimabに切り替えるパリビズマブ/Nirsevimab群(40例)と、パリビズマブを継続投与するパリビズマブ/パリビズマブ群(42例)に無作為化した。Nirsevimab群は継続してNirsevimabを投与した(Nirsevimab/Nirsevimab群、180例)。なお、2年目の流行期のNirsevimabの投与量は200mg、パリビズマブは1回目と同用量であった。

 血清採取は、1年目および2年目のいずれも、1日目(ベースライン)、31日目、151日目、および361日目に行った。抗RSV中和抗体価は、蛍光フォーカスベースのマイクロ中和アッセイを用いて測定し、また、パリビズマブの中和抗体価のピーク値とトラフ値は、母集団薬物動態モデルを用いて予測した。

 1年目の流行期には、2群とも血清濃度と中和抗体反応との間に強い相関が示された。Nirsevimab群におけるピアソン相関係数は0.98で、投与後初の採血時である31日目に最も高い中和抗体価を示し、その後漸減していったが、361日目にはベースラインの16倍に相当する中和抗体価が維持されていた。一方、パリビズマブ群における中和抗体価は151日目に最高値となり、361日目には測定不能な値まで低下し、ピアソン相関係数は0.82であった。151日目のNirsevimab群の中和抗体価は、パリビズマブ群の約10倍高かった。

 2年目の流行期においても、全群で血清濃度と中和抗体反応の強い相関が維持された。各群のピアソン相関係数は、Nirsevimab/Nirsevimab群0.96、パリビズマブ/Nirsevimab群0.97、パリビズマブ/パリビズマブ群0.86であった。各群の中和抗体価を比較すると、パリビズマブ/Nirsevimab群の中和抗体価は31日目にNirsevimab/Nirsevimab群と同レベルまで上昇し、151日目の中和抗体価は、パリビズマブ/Nirsevimab群およびNirsevimab/Nirsevimab群が、パリビズマブ/パリビズマブ群の約10倍高かった。

 以上より、Nirsevimabにより得られる中和抗体価は、両流行期ともに投与後約1年間持続していることから、Nirsevimabは典型的なRSV流行期間である5カ月間を超えて予防効果を発揮する可能性が示唆された。

*本邦未承認

監修 古野 憲司先生のコメント

MEDLEY試験に参加した被験者の血清中のニルセビマブ濃度と標的細胞のRSV感染を中和する能力について、蛍光フォーカスアッセイ法を用いて検討した探索的研究です。感染の中和能力は、初回の採血時(31日目)にピークに達した後も漸減していますが、361日目においてもベースラインの16倍の値を維持しています。日本では、RSVの流行期間が長い上に、ここ数年は毎年の流行の開始時期と期間が異なっています。単回で、体重ごとに投与量を設定しない方法(1シーズン目は5kg未満または以上かで50mgまたは100mg、2シーズン目は全員200mg)では、流行期間を通して十分な効果が得られるのか懸念されていましたが、この結果を見る限りでは、その心配もなさそうです。単回で同じ量を投与することは、準備の簡素化や投与量の間違いの減少にもつながります。