NICU感染症診療 メディカルスタッフ Webセミナー 初級ベーシック教育講座
「第126回日本小児科学会学術集会」より
1-O-011
生後2か月以内の症候性先天性サイトメガロウイルス感染症児を対象とした経口バルガンシクロビル治療 医師主導治験の結果
森岡 一朗 先生
(日本大学医学部 小児科学系 小児科学分野 主任教授)

 先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、先進国における先天性中枢神経障害の主な原因である。日本の全出生児の約300人に1人の割合で認められ、そのうち約20%が難聴・てんかん・発達遅延などの症状を呈す。出生時より症状のある症候性CMVは、約80%が難聴を呈し、その後約40%に発達遅延が認められたという報告もある。米国を筆頭に、我が国においても臨床試験が実施され、抗ウイルス薬であるガンシクロビル、バルガンシクロビルによる治療が先天性CMVによる聴力・精神運動発達を改善または増悪抑制することが示されてきた1)。本邦では、2018年から新生児の尿中CMV DNA検出が保険収載され、簡便に診断できる状況となり、先天性CMV感染症に対する治療法の確立が求められていた。そこで、バルガンシクロビルの有効性や安全性を評価することを目的とし、多施設共同の非盲検単群第Ⅲ相試験を行った2)

 対象は、在胎32週以上、出生体重1,800g以上、生後21日以内に診断された中枢神経障害を呈する先天性CMV感染症児とした。出生後2カ月以内に同意取得し、同意から4週以内にバルガンシクロビルの投与を開始した。バルガンシクロビルは、16mg/kg を1日2回6カ月間投与した。好中球数が500/mm3以下になった場合は、休薬することとした。同意が得られた29例のうち、不適格4例と投与前に脱落した1例を除き、24例がバルガンシクロビルを投与された。好中球減少によって3例が投与中止となったため、本治験を完了したのは21例であった。

 主要評価項目である投与6カ月後の全血中CMV量のベースラインからの変化量は、投薬前のベースラインと比べて、ほとんどゼロになっていた(中央値 -246.0 IU/mL、p<0.0001)。重要な副次評価項目である聴力障害レベルの変化については、投与6カ月後に聴性脳幹反応検査(ABR)で測定した。左右のうち聴力への効果がより良い方を指すbest earが、「改善」が58.3%、「正常のまま不変」が16.7%、「聴力障害が同程度で不変」が25.0%、「増悪」は0%であった。全耳を対象とすると、「改善」「正常のまま不変」「聴力障害が同程度で不変」は93.8%、「改善」「正常のまま不変」は52.1%であり、聴力障害に対する効果が確認できた。全血中CMV量および尿中CMV量は、投薬が進むにつれて下降が見られ、全血中CMV量はおおよそ2週間でカットオフ値を下回り、尿中CMV量は4週間ほどでカットオフ値以下になることが確認された。ベースライン時点で認められた血小板減少、肝機能障害、網脈絡膜炎のあった3例の児についても、6カ月後には全例に改善が認められた。

 有害事象は、19例(79.2%)で発現し、grade 1が10例、grade 2が8例、grade 3が1例で好中球数減少が主な事象であった。副作用は、11例(45.8%)に発現し、好中球数減少が10例、貧血が1例であった。

 本研究の結果を受け、2023年3月より症候性先天性CMV感染症に対するバルガンシクロビルの適用が追加承認され、保険適用で使用できることとなった。日本医療研究開発機構(AMED)の研究班として、先天性CMV感染症に関するホームページをリニューアルし、バルガンシクロビルの適正使用の手引きやQ&Aを掲載している。

参考文献
1) Morioka et al. Medicine 2020; 99(17): e19765.
2) Morioka et al. J Clin Med 2022; 11(13): 3582.